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BSには、あなたの購入価格が反映されていると思います。
でも、それは現在のその資産の「公正な価値」とは異なる可能性があります。
この場合の「公正な価値」は、販売価格に近いと思われます。
購入価格は、特定の金額ですが、今日の価格を必ずしも正確に反映していない、このような場合にその資産の市場価格を適用するわけです。
これがいわゆる「市場価格」です。
でも、全ての資産の市場価格が把握できるわけではありません。
例えば、保有している特許の金額は、他者にライセンスするか、その特許を買ったばかりか、もしくは特許侵害の訴訟に勝ったりしていなければ、把握することが困難です。
そして、このような場面に出くわす特許は実は非常に少数で、多くの特許は無用の長物である場合が多いのが実情です。
では、それら特許の「公正な価値」を把握するには、どうすればいいのでしょう? 同様に、費用の「現在価値」の計算にも、ディスカウントレート選択などの主観的要素が絡みます。
また、先ほどのストック・オプションの例でいくと、IFRS、及び米国GAAP双方が、ブラック-S・モデルなどを用いた計算を求めています。
ブラック-S・モデルのようなモデルを使えば、特定の価格を出すことはできるでしょう。
でも、それらがはじき出す数値は、現実から承離している場合も多いのです。
市場価格を把握することができる場合、公正価格に基づくことで、財務諸表の正確性を増すことができるでしょう(ただしそれは、市場が激動している場合、あなたの資産価値も大きくぶれるということです)。
オプションやその他の計算モデルに基づいて計算する必要がある資産、もしくは単純にその価値を「推測」しなければならない資産に関して言えば、 「公正価値」会計基準には主観的要素がより多く求められます。
500年以上の歴史が教えてくれる通り、その種のテクニックは精敵であるかもしれませんが、正確ではあり得ません。
財務諸表は、過去に起こったことを客観的に表現するものでは「ない」ということを、覚えておいてください。
そこには、主観的な判断と未来の予測が多数介在するのです。
この性質によって、企業が完璧に合法的に、財務結果を改ざんすることが可能なのです。
では、改ざんの最大の動機は何かoそれは、証券アナリストと呼ばれる人々の期待を満足させる、ということです。
というわけで、次節ではウォール街における彼らの役割を探ってみましょう。
生まれてはじめて日本のエンタメ系雑誌を開いたとき、私の日は、新作映画の批評の横にある、小さなクモの巣のような妙な形をしたチャートに吸い寄せられました。
形は妙ですが、たくさんの映画の要素を集めて、評価をエレガントに表現するその創造性には、脱帽したことを覚えています。
映画フアンなら、何千円かを映画につぎ込む前に、この種の「スパイダー・チャート」をいくつも比較検討するのではないかと思います。
それなのに、投資家はどうでしょう?映画鑑賞代金の何百倍、場合によっては何千倍ものお金をつぎ込むのに、上棟当たり利益(EPS)」というひとつの指標にそんなにこだわるのは、なぜなのでしょう?この節では、この執着と、特にウォール街でそれによって引き起こされることがらについて、考察したいと思います。
その過程で、株式市場には投資家の想像をはるかに超えるもっと複雑なクモの巣が張り巡らされていることと、投資家がそれと気づかずその巣に引っかかってしまっていることもお話しいたします。
前節では、近代会計が産声を上げたのは、 1800年代の大鉄道時代だったというお話をしました。
鉄道は、ファミリー・ビジネスで運営するにはあまりにも巨大過ぎたため、外部投資家が必要になりました。
そして、彼ら外部投資家が、自分たちが行った投資の評価を求めた、というのが、そのきっかけです。
財務諸表のひとつ、貸借対照表(BS)は、この目的に合致しているように見えます。
BSは、特定の日の資産(A)、負債(L)、そして株主資本(E)の状沢を表したもので、 A--Eという関係になっています。
この中でも先述の投資家が最も興味を持つのが、 Eです。
利益を出している会社では、 AはLよりも早く伸びていくものですので、必然的にEも成長します。
安定して利益を得ている会社に投資していれば、その会社がそのままの状態で存続する限り、投資家は配当という形で投資に対する見返りを得ることができます。
しかし、 2雌紀にはいると、投資家は配当よりも、持ち株を株式市場で売買して利益を得るほうに、より強い興味を持つようになりました。
そして彼らは、株式を保有し続けるか売却するかの判断の基準となる、わかりやすい数値を求めたのです。
結果として、もうひとつの財務諸表である損益計算書(IS)の重要性が高まります。
ISの最後の行(「ボT・ライン」)には、ある特定の期間に計上された「当期純利益」という項目があります。
この行をアメリカ人がとても好んだため、これをメタファーとした「ボT・ライン」という言葉が一般的に使われるようになりました。
1960年代からは、 ISにより重要とみなされる数値が加わります。
それは、純利益を発行済株式数で割った「一株当たり利益」 (Earnings Per Share /EPS)でした。
ただし、 EPSがある日突然「数値の王様」になったわけではありません。
それは、 1970年代と1980年代に起こった「負債資本比率(D / E)」の大流行の後のことでした(ちなみに、この比率は、 ISからではなくBSから算出します)。
負債が大きい場合、経営陣は費用の圧縮とオペレーションの効率化を求められますので、当初この比率は高くても問題はないとされていました。
しかし、 1980年代終わりに発生した、最大規模の貸金業者を巻き込むインサイダー取引を契機に、負債は突然「悪」になってしまいます。
会社という会社が、負債を隠そうと奔走しました。
結果、会計士の力を借りて、デ)パティプ商品の活用や、 「オフ・バランス・シート(帳簿外、 OBS)」と呼ばれる新しい手法が広まっていきます。
ちなみに、正直な企業は、帳簿外負債を財務諸表から完全に抹殺したりはしません。
読み手がそこまでじっくり読んでくれないことを期待しつつ、財務諸表の「脚注」に記載 という形で開示するのです。
悪いニュースが脚注に潜んでいる理由は、投資家にとって財務諸表を理解すること自体が困難だからです1940年代から、 「ファイナンシャル・アナリスト」と呼ばれる職業が、この間題を解決すべく台頭していきます。
アナリストたちは、必ずしも会計士とは限りませんでした。
大抵のアナリストに共通していたのは、数学が得意で実業経験があったということでした。
そして、自分たちが実務を経験したことのある分野を専門に研究するようになります。
ウォール街では、アナリストは大きく「セル・サイド(売りサイド)」と「バイ・サイド(買いサイド)」の、二つのグループに分けられます。
